しあわせなからだ ♯3 / Noriko Genda

からだはなんでも知っている 


中国式整体の学校を卒業した時、上海出身の先生に「1000人を施術してようやく一人前よ」と言われました。  


そのことばを胸に、整体師になりたての頃は、ただひたすらお客様のからだと向き合う日々を過ごしていました。 

施術が終わった後、クライアントの表情が穏やかになったり、「ありがとう」と言ってもらえたり、指名で来てくれるようになったりと、そんなことでしあわせを感じました。 


何人の方のからだを診た頃だったでしょうか? 

気づいたことがありました。 

そしてそれが施術を通して腑に落ちた時、とても感動したんです。 

これは、今でもいらしていただいた方にはよくお話しするエピソードです。 


わたしは、整体をはじめその他のボディワークを行う際にも、からだをゆるみやすくするために、まず最初に頭を丹念にほぐします。なぜなら、疲労困憊なひとほど、確実に頭が硬いから。 


中国整体には、お腹をさすると書いて「摩腹」という術があります。 

これは、症状によって、時計回りやその逆回りに、手のひらでお腹をほぐしていく方法なのです が、悩み事や考え事を人に言えずに溜めこむ癖がある方のお腹は、これまたとても硬いのです。 


日本のことわざには、からだの部位を引用したものが多くありますよね。 

つまりは、 

「気難しそうな人ってほんとうにあたま硬いんだ!!!」 

「つらそうに見える人ってほんとうに腹に一物(いちもつ)!!!」 


そうです。ことわざは、その人の症状そのもの。 

言い換えれば、からだのありようがそのままことわざになっているんです。 

むかしのひとの洞察力ってすごい!  

ところで、「腹に一物」でいえば、 

丹田(たんでん)ももちろんですが、わたしが”硬さ”を感じるのは横隔膜のあたりですね。 

ことわざの意味をあらためて調べると、「心の中にひそかに考えていることがある様子」とありますが、たいていの場合、「腹に一物」の前に「言わねば腹張る」なのでしょう。 

言いたいことを言わずに呑み込む時って、息を溜めますよね。 

溜めてしまうと、言わなかった、言えなかったことばたちで腹が張る、そしてそこは頑なになって「一物」ができあがるというわけです。 


もともと日本文化では、言わないことの美徳が尊ばれます。 

「ことば多きは品少なし」=「おしゃべりは品位に欠け、ことばは少ないほど奥ゆかしい」 

そんなことわざもあるほどですが、それも行き過ぎれば、現代の日本ではこころを、そしてゆくゆくはからだを病む原因になるのではないだろうか?と思えてなりません。 


「言わぬ事は聞こえぬ」のです。 


お腹にまつわることわざをさらに探れば、この通り。 

腹心を布く → 心の奥底をかくさず打ち明ける。思うことをすっかりのべること。 

心腹に落つ → ふに落ちる。合点がゆく。「心腹」は、こころ。胸のうち。 

物は言いない事は聞きなし→ 物事は言い方次第、また聞き方次第でよくも悪くもなる。 


わたしは思います。 

人と人の関係は、腹心を布いてこそ、心腹に落つ、と。 


ここ数年のわたしは、自分が体得してきたボディーワークの知恵のおかげで、「口に密あり腹に剣あり」にならないように、なるべくなるべく「物は言いない事は聞きなし」の術で「腹心を布く」ようにこころがけています。   




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