be Happy, be Beautiful ♯1 / 宮口明夏


自分で初めてメイクをしたのは大学生になってからだった。母に「化粧には知性が出るから教えてもらった方がいい」と言われ、デパートの化粧品コーナーに行き、販売員さんにタッチアップをしてもらって化粧を教わった。言われるままにコスメを購入し、毎日メイクをするようになった。今思えば年齢の割に随分濃いメイクをしていたと思うが、その頃流行っていたアイメイクを試したり、鮮やかなブルーのアイシャドウやホワイトのアイライナーを使って鏡を見ては自己満足していた。 


大学を卒業してからエステティックの会社に勤務したが、サロン業務が忙しく段々とメイクは疲れた顔を隠すためにするものに変化していた。そのうちに精神的にも体力的にも限界を感じ、転職をした。その後社会経験を積む中で、TPOに合わせたメイクを考えるようになっていった。外勤でお客様と会う日、取引先へ出向く日、会社の上司の面談がある日、会社帰りの合コン、友人の結婚パーティー等。私の周囲の人がその違いに気付いていたかは定かではないけれど(笑)、シーン毎に使うアイテムを変えて小さな変身をして気分を変えていた。 


好きなメイクを仕事にしたいと考え始めたのは、結婚をしてから。家庭も大事にしながら自分のペースで好きなことを仕事にしたい。そんな風に考え始めていたが、ただの趣味で友人にメイクをすることはあってもお金を頂くほどのレベルではない。かといって、35歳を超えて今更美容学校に入学する勇気もないし…と悩んでいたら、私にぴったりのメイクアドバイザー養成講座を見つけることができた。パーソナルメイクアドバイザー。一般の方を対象にセルフメイクを教える仕事だ。 

「大学生の時にこういう人に教えてもらいたかったわぁ。いつかの私のようにメイクをきちんと習いたいと思う人に教えてあげたい!」 

そんな思いで迷う事なく受講を決めた。アイテムの違いや使い方、眉毛・アイライン・チーク・リップ、すべてのパーツの仕上げ方で相手に与える印象を変える方法を理論的に学べた。
理論的に学ぶことでアイテムの選び方も変わり、自分に合うアイテム、合わないアイテムも客観的に判断できるようになり、さらにはセルフイメージまで変わっていった。 


子宮頚がんの手術後、メイクが回復を後押しする力になった 

2018年5月、子宮頸がんの告知を受け、6月に片方の卵巣と子宮を全摘出した。 

パーソナルメイクアドバイザーとして本格的に活動しようとていた矢先のことである。 

緩く妊活をしていて、当たり前のように、いずれ授かるだろうと考えていた。子供が産めない身体になるという現実が受け止められず、ただひたすら流れる涙を止めることが出来できない日々が続いた。気持ちの整理がつかないまま、あっという間に手術日。寝ている間に産めない身体になった。手術が終わると今度は、これまでのように歩くことができない日々に悩んだ。そうこうしているうちに、放射線と抗がん剤の治療。ありがたいことに思っていたよりも副作用は軽く済んだものの、当然ながらメイクをする気力は全くなかった。病気になる前は毎日習慣のようにメイクをしていたし、がん告知を受け号泣していた時期も、鎧のようにメイクをして仕事に出かけた。手術に際し、朝から化粧水も乳液も付けることを禁じられたのをきっかけに何もしなくなっていたのだ。 

退院して水も普通に飲めるようになり、食事も普通にできるようになると、身体はどんどん回復していく。まだ走ることには違和感があったが、ほとんど普通に生活ができるようになったある日。通院日にメイクをして病院に行くことにした。青白くくすんだ顔もメイクをすれば健康に見える。 

「なんだ。何も変わらないじゃない。」 

私は普通だ。がん患者かもしれないけど、今、私は普通だ。がんによって全てが変わってしまったように思えていたけれど、鏡の前の以前と変わらない自分の姿を見て少し元気になった。 


病院に行くと顔なじみの看護師さんやがん友達が私の顔を見て「誰かと思った!」「キレーイ!!見違えたー!!」と言ってくれた。久しぶりに嬉しい瞬間だった。 


これをきっかけに、退院後出来るだけ家に居ようとしていた私が、メイクをして出かけるようになった。出かけるようになるとさらに体力がつき、心も元気になっていった。退院して1か月経たないうちにがん経験者の為ためのヨガ教室に行ってみようという気持ちにもなれた。 


自分に合ったメイクをすることで、いつもの日を少しだけ特別な日に 

女性の美しさは「幸福感」だと思っている。幸せそうな人は、どんなにシミがあっても、しわがあったとしても綺麗だ。内面が充実しているからこその美しさ。内面の充実が大事なのか外見の美しさが大事なのかという議論は、結局「鶏が先か、卵が先か」という話に終始すると思うのでやめておくが、外見を整えることにより、日常を自分だけの特別な日にすることはできる。 


多くの女性が大人になればなるほど、流行のメイクではなく「自分らしさ」を求めるようになると思う。自分のキャラクターにあったメイクは、不思議と心地良く、自信を持たせてくれる。 

メイクアドバイザーとして、メイクの仕方を伝えるのが私の仕事ではあるが、テクニック以上にメイクをする時に感じるワクワク感や、日常を楽しむ気持ち、前向きなマインドへの変化を体感して欲しいと思う。



★2018年12月2日(日)に宮口明夏さんによる眉毛の描き方ワークショップを行います。詳細は別途お知らせいたしますので、楽しみにお待ちください。


Hōʻailona

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