body・mimd・spiritに効く映画 ♯2 / 編集部

普通の映画好きHōʻailona編集部H(♀)と、中年、中堅、意識高くも低くもない映画ライターK(♂)の30代後半妙齢男女が、body・mimd・spiritに響く映画をご紹介します。 
今回はインド映画、『パッドマン 5億人の女性を救った男』。 
インドの社会活動家、アルナーチャラム・ムルガナンダム氏の実話をもとに、たった一人でインドのタブーに立ち向かった男性と、彼を取り巻く女性たちの物語です。 
注:ネタバレを含みます。


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真面目なテーマをエンタメに昇華、笑って泣ける明るい社会派ムービー 

Body:★★★★★ 

Mind:★★★★☆ 

Spirit:★★★☆☆ 


引くぐらい素直な妻への愛が、社会を変える大きな力に 


映画ライターK(以下K): 

エンタメ映画として面白い! 山あり谷あり、笑いあり、涙あり。わざわざ『PADMAN』というタイトルをつけてるだけあって、アメリカのヒーロー映画を模したような大げさな演出になってて笑えたね。(PAD:生理用ナプキン) 


編集H(以下H): 

深刻な真面目な話に終始してなくて楽しめた。2時間以上あったけど、飽きなかったよね。 


K: 

でも、その裏にちゃんと社会問題を描いてたし。映画中盤で、初潮が来て「女の子が大人になった!」 とみんなで華やかに歌って踊って祝福し「THE インド映画!」って感じで楽しく盛り上げといて、その直後に母親が娘に「はい、そういうわけで、あんた今日からしばらくベランダで寝起きね」ってとことか闇の深さを見せてくれるぜ! 

生理中、女性が家族や社会と隔絶されて生活しないといけないという習慣について、人権や健康面の問題としてだけでなく、月に5日間、年に60日も女性が働けないのは社会的損失だと捉えて社会を変えていこうという主張も「なるほど、その通り!」と思うよね。主人公のPADMANことラクシュミは、自分が開発した生理ナプキンを作る機械を持って各地の村を回って、女性を生理ナプキンの製造&営業のスタッフとして雇うけど、女性に「経済的な自立」という武器を授けようとする姿勢も素晴らしい。 


H: 

インドのことを詳しくは知らないけれど、日本よりも宗教が人々の生活に根付いているだろうし、ラクシュミがやったことはものすごく革新的なことだったのだろうと想像できる。
ラクシュミが、馬鹿なんじゃないかっていうぐらいとにかく純粋で、自分が大切に思うことを貫く姿勢に気持ちが洗われたね。 

私も、あんな人が身近にいたら、何か力になりたいと思うだろうな。
「女性は〜」とか「男性は〜」とか、型に当てはめるのは好きじゃないけれど、あれはあれで、一つの男性の魅力のような気がする。よく言う「少年のような人が好き」的意味で。 

男性から見ると、ラクシュミってどうなのよ? 


K: 

たしかに少年だよね。決して男性的(マッチョ)ではなく、コドモ! もうちょっと大人として根回しとか説明をしろよ! と思わなくもないけど(苦笑)。ただ、他人の称賛や共感を求めて動いてるわけじゃないヤツって強いよね。承認欲求ではなく愛情欲求が原動力だから。 

一方で、既婚未婚問わず、「彼がパートナーだったら引くわ」っていう日本の女性も多いだろうなとも思う。 


H: 

それもちょっとわかる。日本の女性も、インドの女性とはまた違ったものに囚われている気がする。自分の気持ちよりも、社会的に「こうあるべき!」みたいな見えない基準を優先していたりね。 



男性も、そして女性も。相互理解以前の問題があるのかも 


H: 

ところで日本の男性代表として聞きたいんだけど、生理について、ラクシュミのように気持ちが寄り添うものなの? 


K: 

なかなか難しい質問だなぁ。まず、そもそも知識が足りなさすぎる! というのが大きな問題としてあると思う。今もそうなのかわかんないけど、俺らが小学生の頃、ある時急に「今日は女子だけこっちの教室に来て…」みたいなことなかった? あの時、女子は生理に関するレクチャーを受けてたわけでしょ? 


H:

あー、あったねそんなの。 


K: 

生理に関する事柄って、なんとなく裏でコソっと知識が共有される「セックス」にまつわる秘め事の類になっちゃうんだよね。なぜ女性は生理になるか?肉体的、精神的にどれくらいキツイか、しかも毎月!とかっていう肝心の知識がないままに「なんか、大変らしいけど、どうすればいいのやら」って感じになっちゃうのかなと。 


H: 

個人差があるものだから、女性同士だからこそ軋轢が生まれることもあるしね。「本当にそんなに辛いの?私全然だけど。」みたいな。 


K: 

生理について、会社や学校っていう社会でどこまで開放的に話せるのがいいかってのは、その線引きに議論の余地はあると思うけど、少なくとも夫婦や恋人間では、オープンに情報を共有し合えた方がいいと思うし、そのためにも男女ともに早い段階で正しい知識を身に着けさせるべきだよね。 

ラクシュミは豚の血とゴムボールを使って、生理がどういうものか経験しようと試みるけど(このシーン最高!)、ごく普通の男たちは「知識」を持つことしかできないんだから。



二人のヒロインを通じて見つめ直す 自分自身の価値観 


H: 

物語はラクシュミがナプキンを普及させるって軸に加えて、妻とビジネスパートナーっていう二人のヒロインとラクシュミの恋愛物語にも発展していくね。
って言っても、ラクシュミは男女の自覚なさすぎな感じだったけど。 


K: 

生理用ナプキンの普及を目指す男のドラマに三角関係のラブストーリーまでぶっこんでくるって、さすがインド映画(笑)!しかもこの二人の女性像が対照的で、意外とこっちの恋愛パートで「女の幸せとは?」とか考えさせられるよね。 


H: 

小さな村で暮らす保守的な妻ガヤトリと、村を追われてラクシュミをビジネスパートナーとして支える進歩的なパリー。Kがラクシュミだったらどっちを選ぶ? 


K: 

そりゃパリーだね(即答)。ラクシュミはガヤトリを愛するがゆえにあんなに頑張って、離ればなれになってもナプキンの開発に全てを捧げてるのに、肝心の妻のガヤトリの理解がゼロなんだもん。二人が久しぶりに電話で話すシーンで、ガヤトリが「あの人、まだ生理ナプキンがどうのって言ってるわ…」って嘆いて泣く姿にはかなりイラっとしたわ、正直。 


H: 

私が圧倒的にパリーに肩入れするのは、パリーの考え方が私自身の価値観に近いからなんだと思う。 

ガヤトリが「ラクシュミに変わってもらいたい、そして戻ってきて欲しい」と思っていたのに対して、パリーは「このままのラクシュミでいて欲しい」って言ってた。 

私の感覚だと、変わって戻ってきたら、それはラクシュミじゃない別の人。 

パリーはまだ成功していなくて借金しかない、ただの人としてのラクシュミに惹かれたのに対して、妻が求めているのは「夫」って感じなのかな。 

でも一方で、ガヤトリの世界ではそれは当たり前のことで、ガヤトリという個人がいいとか悪いとかいう問題でもないとも思う。古いのが悪くて現代的が正しいとも思わない。 

正しい・正しくないではなくて、自分の今の考え方を振り返ったというか。 

自分がどういう価値観で生きていきたいのか考えさせられた、っていうと大げさか。


K: 

映画で見る分には、夫に「ほかの村人と同じ常識人でいてよ!」と願いつつ、大成功を収めて凱旋したら「愛してるわ!」って抱きつく妻に「ガヤトリぃ…、都合のええ話じゃのう」って怒りを覚えるかもしんないけど、実際にその立場になったら、そっちが正しく見えるかもしれないよね、男女どちらにとっても。「広い世界を知る」って素晴らしいことではあるけど、「幸せ」とか「正しさ」とイコールとは限んないわけで。 

現代日本で言うところの「嫁ブロック」(夫の転職希望などに妻が反対すること)みたいな? 

冷静に考えて、妻に理があるケースだって多いだろうし。もちろん、嫁ブロックを振り切って、社会を変えて多くの女性を救ったラクシュミは本当に偉大だけどね。 

というか、映画でラクシュミにヒントや助力を与える人たちの多くが、医学生とかパリーとか、開明的な教育を受けた人たちばかりで、しかもみんなメガネ女子! 


H: 

そこ急に声大きい(笑) 


K: 

ラクシュミの成功、それもナプキンの開発そのものではなく、国連での演説&国の褒章という目に見える形での権威づけによって、かつて彼を追い出した社会(村)はてのひらを返して英雄扱いで迎えたけど、たぶん「生理は穢れ」って価値観は変わんないし、ガヤトリの価値観もあんまり変わってないのかも。 

見る前は、「この映画を見て日本男児も生理に対する理解を!」みたいな感じになるかと思ってて、そういう要素がなくはないけど、そういう方向性じゃなく、女性の在り方とか幸せについても考えさせられました。パリー…。 


H: 

一方で、ラクシュミにとって一番いいと思う選択をしたパリーね。 

もうね、パリーのことを思って泣いたから、帰りの地下鉄の中で。ひとりで。
パリーに幸せになってもらわないと、浮かばれないわけですよ、私が。 

選択肢が多いのって、果たして幸せなのかな?とか考えちゃったよ。 

Kも言っていたけれど、インドの女性がこの作品を見てどう思うのかは確かに知りたい。 


K: 

と、こんな風に見終わって、あれこれといろんなテーマで話せるけど、基本的には全編を通して笑って楽しめる映画でした! パッと見、ジョージ・クルーニーのようなハンサムな感じなのに、どこかヌケサクな雰囲気で憎めないラクシュミ役の俳優によるところも大きいと思う。 


H: 

あと、前回も衣装衣装言ってたけど、個人的なもうひとつの見所は、衣装。やっぱり映画は目で見るものだから、綺麗なものには目がいく。
ラクシュミは裕福でない設定だったのに、嫁は毎日違うサリーを着てて、美しかったなあ。
男性がみんな白い服っていうのもよかった。ランニング一丁な時とかもあったけれど、ちゃんと洗濯して清潔な感じだったし。

それにしても、白シャツをあんなに綺麗に洗濯しているのに、なぜナプキンは汚い布を使ってたんだろうね、謎。




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