からだで感じる音楽案内 ♯2 / マジェ子 a.k.a. MAJESTIC WOMAN

DJ の仕事とヘナの仕事

今から数年前、熱が下がらないひどい風邪にかかり数日寝込む経験をした。

滅多に行かない病院へ行き血液検査をしたところ、バセドウ病にかかっていたことが判明した。バセドウ病とは甲状腺ホルモンが過剰に分泌され自分自身を攻撃してしまうというもの。心拍数が異常に増え、疲れやすくなり手が震え、ひどくなると眼球が突出してしまったりする病気。DJをしたりイベントに出かけたり夜型の生活を十数年続けてきたことで、私の体はいつの間にかストレスによってすっかり通常の状態ではなくなっていた。


生活が180度変わる

「DJで食べていく」そんな夢を掲げて頑張ってきた自分。しかしその夢も治療のために諦めなくてはならなくなった。足繁く通っていたクラブへも通えなくなった。規則正しい生活、それが何より大切だったから。

母からの勧めでヘナ(*)の仕事を始めようと決心したのもこの頃だった。

そして、今後は全てのDJの機会を諦めようと決心をした。

とはいえ、それまでの私は、DJといってもギャラが満足にいただける仕事はほとんど無く、アルバイトをしながらコツコツ続けているという状態だった。

それでも全然苦にならなかったくらいDJをすることは私の心とからだにとって純粋な喜び、のはずだった。でも病気になった。今思えば、「DJで食べていく」ということを、本心で信じきれていなかったのは自分自身だったのかもしれない。

そんな才能が自分にあるんだろうか、と。



DJの仕事が入ってきた

ヘナの仕事をし始めて間もなく、DJの先輩から連絡をいただいた。都内の外資系ホテルが女性のラウンジDJを探しているからやってみないかとの話だった。

まだ体調も芳しくなく、ヘナの仕事に集中するんだという誓いを立ててしまったばかりの自分には、そのありがたい提案に即答することが出来なかった。

電話を切ってそばにいた母に相談した。母は少し考えて、「やってみたらいいじゃない」と軽やかに言ってのけた。

ずっと私がDJをすることに乗り気でなかった両親。それは私の体を思ってのことだった。

夜型の不規則な生活とタバコの煙、妙齢の女性にとっては過酷な環境にいることを心配していたのだった。そんな母があっさり背中を押してくれたので拍子抜けしたものの、ホテルでのDJの時間帯がクラブでのものより早い時間だったこともあって、やってみようと決心した。先輩に連絡をして「やらせてください」と返事をした。

その先輩には今でも足を向けて寝ることが出来ません。彼自身も本当に素晴らしいDJで、今ももちろん活躍されている。


ホテルでのDJ

クラブでDJをするのと、ホテルのラウンジでDJをするのは勝手が全く違った。

流す音量からプレイする曲もすべて。客層がまるっきり違ったからだ。

その外資系のホテルは、海外のゲストがとても多かった。年齢層も高く、今まで会ったことのないタイプの人々が寛ぐラウンジでの選曲はとても気を遣った。

週に2日、1日40分を4セットプレイした。どんな曲がこの空間に似合うのか、試行錯誤する日々が続いた。選曲だけでも相当なプレッシャーだったのに、それに加え衣装にも気を遣う必要があった。手持ちのドレスを総動員しても毎週のことだったのですぐに弾切れ。

そんな時とても助かったのが、デザイナーをしていた友人から衣装を貸してもらえたことだった。エレガントな女性らしいシルエットや色使いを得意としていた彼女のドレスは、そのホテルのラウンンジにとてもよく映えて、ゲストや友人からよく褒めていただいた。本当に今でもいくら感謝してもしたりない。彼女もまたデザイナーとして活躍を続けている。



世界中からやって来るゲストに向けて

ラウンジでの選曲は目立ちすぎず黒子になりすぎず、が良いバランスだったように思う。

4セットあるうちのはじめはラウンジに馴染ませるような感覚でアブストラクトなトラックを選曲。

夜も更けて、お酒も回ってきておしゃべりにも花が咲き、賑やかになってきたラウンジには、温度高めの音楽を。BPM(音楽のテンポを示す単位)も自然と上がっていくというもの。

音楽にはそれぞれが持つ温度や色、絵、風景のようなものがあって、それを映画のように頭の中でストーリーとして組み立てているような感覚が自分にはあるような気がする。



からだで感じる音楽

素敵な音楽を聴くと、思わずからだのどこかが動き出してしまう。そんな人も少なくないと思う。ラウンジのゲストたちも、おしゃべりが途切れ、ふと耳に入ってきた音楽に合わせてからだを揺らしたり、時に歌ったり、DJブースの横でチークダンスを始めるカップルもいた。そんな瞬間を眺めていられる時間は本当に楽しかった。人がまったり寛ぐ時間のための選曲をする。今までにない経験を存分にさせていただいた5年間だった。


そして、このホテルでの仕事をいただけたおかげで、「DJで食べていく」という夢が実現したのだった。担当してくれた同い年の敏腕マネージャー、推薦してくれた先輩、全力で応援してくれたパートナー、家族、友人たち、すべての人に心から感謝している。本当に素晴らしい経験をさせていただいた。


一番欲しかったものを思いきって手放したら、それがプレゼントされた。自分でも想像しなかったくらいの喜びが手に入った。


バセドウ病になってから一日にいくつもスケジュールを入れるのをやめ、規則正しく生活し、無理をしなくなった私はすっかり元気になっていた。

朝まで続くイベントには滅多に行かなくなったけれど、早い時間帯のDJは楽しく続けているこの頃。そして、自分のからだを考え直したときに始めたヘナのセラピストとしての仕事も、良いバランスで両立させることができるようになった。



最後に、本日の音楽案内を。

イギリス人のアーティスト、Lianne La Havas(リアン・ラ・ハヴァス)の「Wonderful」という曲は、ラウンジDJのラストセットでよくかけていた曲。何度聴いてもうっとりとしてしてしまう。



* ヘナとはインドのアーユルヴェーダハーブで、白髪を染める用途のみならず体調を整えるハーブとしても広く知られている。私のサロンでは、ヘナをはじめとしてアーユルヴェーダでもおなじみのインドハーブ数種を使用し、日本人の生活に合ったハーブトリートメントを行なっている。セルフヘナのワークショップやヘナのセラピスト養成講座もひらいている。→「Attari」


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