Baby's coming! ♯6 / Saori

NICUってどんなところ? 

皆さん、こんにちは。 

前回までのテーマ、「妊活」が一区切り。執筆中は、伝えたいことがどんどん溢れてきました。改めて、まだ妊娠を考えていない方にも、お読みいただけると嬉しいです。 

続いての次のテーマは「妊娠中」。身体の変化や意識したいこと、今注目されている胎児教育などをお伝えいたします。楽しみにしていて下さいね! 


さて、今回は番外編として、私が勤務しているNICUと新生児医療の現状をご紹介します。 



皆さん、「NICU」ってどんな病棟かご存知でしょうか。 

NICUは、“Neonatal Intensive Care Unit” の略称。日本語にすると新生児集中治療室です。 


赤ちゃんが元気に産まれ、体重もしっかりある場合は産科の管轄。 

産科からママと一緒に退院した後、赤ちゃんが風邪にかかった場合は小児科の管轄。 

NICUは産まれたばかりの新生児期を元気に過ごすことが難しい赤ちゃんをケアする病棟です。 

早産とされる22週以降〜37週未満の赤ちゃんや、低出生体重児とされる2500g未満の赤ちゃん、生まれつき疾患を抱えている赤ちゃんをお預かりする病棟です。(*1) 

小児科と産科の間の役割を担う病棟だと考えていただけるといいかもしれません。 



国際連合児童基金(ユニセフ)が発表する統計によると、日本は世界で一番新生児死亡率の低い国。(ちなみに、2位はアイスランド、3位はシンガポール)そして、妊産婦死亡率も世界トップクラスの低い値です。これは、新生児医療が大きな進歩を遂げていることや衛生面の改善によります。 


また、平成8年より、周産期医療情報ネットワーク事業(*)が開始され、ママと赤ちゃんをしっかり管理できる体制は、ここ20年程でかなり整ってきていると言えるでしょう。 


けれど、それでも全ての命を救えるわけではありません。 

受け入れ可能な病床数が足りず、妊婦がたらい回しにされることが、今でも大きな問題となっています。さらに、技術の進歩から不妊治療が進歩し、多胎妊娠(同時に2人以上の胎児が子宮内に存在すること)や高齢出産の増加などから、早産や低出生体重児の出生率は年々増加しています。 

私は3つの病院のNICUで勤務してきましたが、いずれもほぼ常時満床でした。赤ちゃんはすぐには大きくなれないし、退院できるまでには様々な課題を解決していかなければならないため、ベッドが空くまでに時間がかかります。私も日々、受け入れたくても受け入れられない現状を痛いほど感じています。 

そのような状況の中で、「最善の選択」は何か、医療現場のスタッフは常に考えています。
結果だけでは見えてこない現場の状況があり、その中で出来る最善の選択を常に考えているのです。 



今までに私が出会った一番小さい赤ちゃんは400g台。そして一番早く産まれてきた赤ちゃんは妊娠22週台です。当時はこんな早産が本当にあるんだ、と驚く気持ちが正直なところでした。全身赤黒くて、細いチューブを入れて呼吸器の力を借りていた赤ちゃん。ドクターや先輩から状態を教えてもらいながら必死に看護をしましたが、触れるたびにビクビクするのを見ると怖くなってしまい、涙が出たのを覚えています。 

「ママも私達も同じ気持ちなんだよ。怖い、でも自分の赤ちゃんと向き合おうとしてる。まずは私達が繋げてあげよう。そして一緒に育てていくんだよ。」 

先輩の言葉は、今でも忘れません。まずは自分がちゃんと知って、ちゃんと向き合わなければいけない、みんなで一緒に育てていくんだと、NICUの役割とやりがいを見つけた瞬間でした。 


赤ちゃんが自分でしっかり呼吸出来るようになるのは約33週以降です。それまでは呼吸器の力を借りて、点滴や胃に届くチューブから母乳を届け、少しずつ大きくなります。
35週頃になると口から母乳を飲めるようになります。そして37週前後に、全身の異常がないか検査を行い、2000〜2300gを超えた頃退院することができます。 

お腹の中で生活する10ヶ月分を、外の世界でご家族と私たちが育てていく場所がNICUなのです。 




「ごめんね、早く産んじゃって。元気に産んであげられなくて。」と、自責の念を抱えてしまうママが多いです。 

けれど私はたくさんの赤ちゃんを見てきた経験から、どんな子にも産まれてくるタイミングがあると思っています。赤ちゃんが選んだタイミングをしっかり救ってあげることに、私達は全力を尽くします。 


ママやパパにお願いしたいことがあります。 

赤ちゃんに「よく頑張ったね、産まれてきてくれてありがとう。」と、想いを伝えてあげてください。 

まずはその瞬間を一緒に受け入れ、頑張った赤ちゃんと、そしてママを誉めてあげてほしいと思います。 



NICUでは、産まれてすぐに抱きしめてあげられない子がほとんどです。 

でもご家族にしか出来ないことがたくさんあります。 


手を握ってあげること、 

母乳を届けること、 

ママとパパの声を聞かせてあげること。 


このパワーが赤ちゃんを成長させます。 

私はご家族が育児に迷ったとき、辛くなったときに、ささやかでも「道しるべ」を示していけるよう、これからもずっと赤ちゃんとご家族に寄り添う存在でありたいと思っています。 



今回お読みいただいて、妊娠する事が少し不安だなと感じられた方もいるかもしれません。 

けれど、女性だけではなく、ご夫婦に知ってほしいことは、厳しい表現になってしまいますが、妊娠と出産は命がけのイベントだということです。 

現在はリスクを抱えながら妊娠する方が増えています。 

そして社会背景と重なるように、NICUの稼働率と重要性は年々上がっています。多くの命を “助けられる” 今だからこそ、さまざまな命の形を受け入れていくことも考えなければいけないと、私は思います。 

決して人ごとではないのです。 

NICUや新生児医療について知ることは、どんなことが起こる可能性があるのか、妊娠・出産のための予習として捉えていただければと思います。 


そして、最後に。 

現場にはママと赤ちゃんを支えるスペシャリストがいます。 

一緒に話して、一緒に決めていきましょう。 

「出産」というイベントだけでなく、女性として、ママとして。輝ける未来を、私たちスペシャリストと一緒に考えていきましょう。 



*1 対象が「妊娠22週以降」なのは、現在の医学の定義では妊娠22週未満で産まれても、胎外生活を送ることはできないとされてるため。妊娠22週未満に妊娠が中絶することを「流産」、妊娠22週以降37週未満で、何らかの原因で分娩しなければならない場合を「早産」といいます。 


*2 周産期医療情報ネットワーク事業とは、平成19年には39都道府県が導入している、電子カルテによる地域の医療機関のネットワーク化事業。これにより緊急搬送時に、ハイリスク妊婦や治療を要する胎児や新生児を受け入れられる病院の空床状況や手術の可否などをあらかじめ確認することができます。


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